赤塚先生お気に入り『おそ松くん』1
「チビ太の金庫破り」
そこへ現れたのは、刑事のイヤミ。一度金庫やぶりという悪事に手を染めたものは、必ず繰り返すという持論のもと、チビ太を付け狙います。そして、チビ太の素性をバラすような素振りまで。が、チビ太は、もう昔のチビ太ではありません。
魚屋に真新しい金庫が運び込まれました。そこに居合わせたおそ松とチョロ松は、過って金庫に閉じ込められてしまいます。苦しそうなふたりの声と刑事イヤミの間で揺れ動くチビ太。葛藤の末、「助けられるのは自分しかいない!」と、金庫やぶりの禁を解いて、道具を手にします。
チビ太の金庫やぶりの腕は、今もにぶっていませんでした。金庫が開いて、閉じ込められていたふたりは無事に助け出されました。そう、イヤミ刑事の目論見通り、チビ太は金庫を開けてしまったのです。イヤミ刑事の「金庫を開けたら、逮捕」とは、ひどい言いがかりですが、前科者のチビ太は受け入れるしかないのでしょうか。
すっかり観念したチビ太は、両手を揃えてイヤミ刑事の前に進み出ます。ところが、イヤミ刑事は、「しらないザンス」と横を向いてとぼけて、チビ太の前から立ち去ります。イヤミ刑事もチビ太が人助けをしたことがわかったのでしょう。チビ太は、そんなイヤミ刑事のやさしさに触れて涙を流します。
チビ太は、トト子ちゃんには短い置き手紙をして
かつての子分・ハタ坊と新しい土地へ行くことに決めました。ふたりで心機一転、まじめに働くのです。このストーリーは、O・ヘンリーの短編『よみがえった改心』をベースにして書かれました。
チビ太が、「さあ、つかまえてよ」というと、「ミーはチミなんてしらないザンス」とイヤミが知らん顔して行ってしまう場面が好きなんだ。ここを描きたかったんだよ。