懐かしい顔がひさしぶりにやってきた。
ボクのデビューのきっかけをつくってくれた当時「少女クラブ」の編集部にいらした丸山昭さん、通称丸さん。ぼくがギャグ漫画を描く前に美しい少女漫画を描いていたってことをご存知ない方も多いらしいけれど、この丸さんにお世話になって「荒野に夕日がしずむとき」「千本杉の家」「くらやみの天使」「おハナちゃん」「白いかっぽうぎ」なんていう名(?)作を描かせてくれたんだ。石森氏との合作もけっこうやった。「くらやみの天使」(U・マイヤ名義/石森章太郎さん、水野英子さんと赤塚の合作)「ちりぬるを」(いずみあすか名義/石森章太郎さんとの合作)「きえていく星」(前同)なんてのがそう。この人がいなかったら今の赤塚不二夫は、絶対にいないのだ。それほど世話になったボクの大恩人なのだ。
丸さんがやってきてくれたのは、ボクのトキワ荘時代からの漫画仲間、石森氏(故石ノ森章太郎さん)の記念館のためのVTR撮影のインタビュアーとしてだった。
「石森氏」っていうのは当時ボクたちの間で流行っていた呼び方で、誰にでも氏をつけて呼ぶんだ。これは、実は手塚先生のマネなんだけれど、…氏って呼ばれると当時はまだハタチそこそこの漫画家のタマゴにもなりきれないボクたちが、一人前に扱われたような気がして、誇らしかったのを覚えているなぁ。だから今も「石ノ森さん」なんて呼ぶのはちょっと慣れないな。
丸さんとは、もう45年くらい昔の話し…トキワ荘のビンボー話とか、石森氏の話しとか、初恋の話しなんかして、楽しかったなー。
でも、もういつの間にか石森氏もいなくなってしまった。
ボクもいつかそっちに行くだろうからそうしたら、またみんな一緒に「トキワ荘の青春」でもやろうじゃないか、もうちょっと待っててくれよ、なぁ石森氏。
「くらやみの天使」
「おハナちゃん」