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当たったり、外れたり、転んだり…そして記念日

 競馬場からコニャニャチハ!師走の風は冷たいですが、ボクはこうしてぬくいところで競馬をやっています。仕事仲間で友人のスポニチのヤマグチくんが、招待してくれるモンだから、すっかりハマっちゃって毎年この時期にスポニチ賞ステイヤーズステークスにきているんだ。ボクは別に競馬ファンではないけれど、ヤマグチくんのおかげでスタンド最上階のゴンドラ席に入ることができて、ココが気にいっちゃった。なんといっても眺めがイイし、お料理も食べ放題、おチャケも飲み放題と天国のようなところ。
 と、いってもただ喰いははしたないから、ちと馬券も買いますか、といくつか買ってみた…。
 と、ここまできて賢明な読者のみなさまは「赤塚、なんでランドセルしょって競馬に行ってるんだ?」と不思議に思われたことでしょう。…告白します。6日程前にベッドから転がり落ちて鎖骨を骨折いたしました。ランドセルに見えるのは肩を固定しておくためのサポーターなのです。
 そんなに飲んでいなかったんだけれど、おしっこに行こうと思ってベッドから起きあがったらフラフラ~っとして…。けれども賢いボクちゃんは決してそのまま落ちた訳ではありません。頭から落ちたらまたICU行きになる!と、とっさに判断して肩からドスン。結果、全治1ヶ月半のランドセル暮らしとなりました。
 真知子に言わせると「ホントにボクちゃんって病上手の死に下手だね。」だって。う~む、いいこというなぁコイツ。
 でもね真知子ったらこんなオレに呆れたのか、ただの打撲だと思ったのか、シップをしたらそれでおしまいと、そのまま一晩放っておかれたんだ。翌日になってグラスを持つとやっぱり右手が痛いから念のためにレントゲンを撮りにいったら立派な骨折でした。でも、今は全然痛くないし、こうして競馬をやるくらい元気だから安心してくれ。
 安心…と言えば今日12月14日は、赤穂浪士討ち入りから300年という記念日だけれども、ボクの食道ガンの手術から3年という記念日でもあるんだ。確か♪あれは3年前…♪ 1ヶ月前に内視鏡検査をしたけれど、なんでもなくみごとクリア!それなのに真知子ったら、ボクがちょっとでも咳をすると「ほらー、ガンが喉に転移したぞー。さーもう飲めないぞ」と脅かすんだ。フン!ボクは元気なの。肝臓だって飲むわりにはキレイだってさ。ツルマル先生ありがとう。こうして生きていられるのもあなたのおかげです。

ホラ、いいながめでしょ。この下をお馬さんが走っていくのです。

このようにお料理がならんでおります。もちろんドリンクも豊富に取り揃っております。

この人がボクたちを招待してくれたヤマグチくん。「ヤマグチくん、それはオレのボトルだからこっちへちょうだいよ」「真知子さ~ん、コレ先生に渡していいの~?」「お・おい!ちょっと、真知子に聞くなよ」

競馬って難しいな~。カンを頼りにデタラメに買ってみるけど結果は…。

一番人気のエリモプライアンを買った。やったー!当たった!!と思ったけれど、1.4倍しかつかなくてガックリ。最終的に本日の収支はマイナス16,000円也。まっしょうがないか、シロートだから。

日記 2001年 12月 1日(土)を開く
師走にいい話

 「あ~どうしよう!」珍しく真知子があわてている。「お財布落っことしたみたい…」「え?なんだ…」と思ったけれど、思いのほか真面目な顔の真知子さんにそんなこと言ったら、ブッとばされる。
 「いくら入っていたの?」と聞くと、ちいさな声で「30…35万円…以上…」。土日で熱海の家に行こうと思っていたのと、会社に立て替えていたお金を精算したところだったので、いつもよりたくさんお金が入っていたという。オレは「もう出てこないな」と思ったけれど、それを言っちゃあお終いなので「みんなに聞いてみな」と言っておいた。
 それでも現金はともかく絶対に返してほしいものがあると頑張るので、よく聞くとなんとオレの運転免許証が入っているっていうじゃないか!あんなに苦労して取った免許だもの、そりゃあ返してもらわなきゃ!!それと今は亡き愛猫菊千代の爪も入っていたという。そりゃ返してやってくれよ。と、だんだん真知子がかわいそうになってきた。
 それに、真知子の免許証も銀行のキャッシュカード、クレジットカードもオレのも真知子のも全部一切合切がなくなってしまったので、ひとつひとつに連絡をとらなくちゃいけないんだって。それと警察に遺失物届け。あーこの忙しい時に大変と、さらに真知子はしょんぼり。タクシー会社や病院、事務所、車の中…もう一度ていねいに探したり、電話で聞いたりしても見つからなかった。
 それでも事務所の進藤さんに「真知子さんはいっつも人のために一生懸命やっているのに、かわいそう。きっと出てきますよ。でも、もし出でこなくてもあたしが財布につける鈴を買ってあげます。」と言われてずいぶんラクになったみたい。
 そして、免許証がないと運転できなくて不便だから、もう諦めて自動車試験場へ行ってくると言っていたのは財布を落としてから11日目の午後。
 …12日目の今日、事務所にふたりの高校生カップルが訪ねてきた。おずおずと差し出したその手には…「ああ、あたしのお財布!!」 なんでも皇居(!)の植え込みに捨てられていたのを5日ほど前に見つけたんだけど、風邪をひいていて、届けられなかったとのこと。お金は一銭も入っていなかったけど、オレの免許も菊千代の爪も無事戻ってきた!!
 この高校生カップルは自転車で近所から返ってきた真知子を見て「あっあの免許証の顔と同じだからココでいいんだ!」って思ったんだって。
 真知子ったら感激しちゃって、もう大変だったよ。ひとつひとつ財布の中身を説明したり、写真を撮ったり…でも、よかった!世の中捨てたもんじゃぁないな。どれ、オレもお祝してあげなくちゃ。お~い、一杯くれよ!

たくさんのカードに泣きながらハサミを入れました。成仏してください。チ~ン。

天使のようにさわやかな高校生カップル。このまま良い大人になってください。

日記 2001年 12月 4日(火)を開く
年末はアレコレと…

 ランドセル姿のオレだけれど、例年通りケッコー忙しい年末を過ごしております。先日(12/10)は集英社の手塚賞・赤塚賞という漫画の新人賞の授賞式とパーティのために帝国ホテルにいってきたのだ。新人漫画家の誕生に手を貸すのは骨が折れるけれど、とっても大切な仕事だと思ってずっと続けている。けれどもホンネで言えば候補作品を読むのがとにかく大変!ある程度は編集部がしぼってくるけど、それでもたくさんの漫画を読まなくちゃならないし、その中から才能がキラリと光るヤツを見つけなくちゃいけない、となると真剣勝負だからな。まっキミたちはこの苦労に応えるべくがんばりなさい!!
 授賞式のあとは、大きな会場に移動して集英社の忘年会をかねたパーティとなった。そこでまた、オレが鎖骨を折ってるなんてこと誰もご存知ないもんだから、友だちやら知らない人にまで、右肩は叩かれるし、無理矢理握手されるし、サインまでねだられちゃって、もーいいかげんにしろよ!と逃げるように会場を後にした。
 そして気を取り直して「クラブ数寄屋橋」におじゃました。ここは編集者や作家もちろん漫画家なんかが集まるところで、オレも15.6年前には良く顔を出したんだけれども、さいきんトンとご無沙汰だ。それでも、ここのクミちゃんとはずっと友だち付き合いが続いているから、ちょっと寄ってみる気になったって訳だ。
 そして、日にち変わってきょう20日は小学館の忘年パーティに出席したのだ。こちらも同じく帝国ホテル。1,600人も集まる大会場の中で、なぜかオレは昔の担当者武居記者に挨拶をしろと言われて壇にのぼった。特に言うこともナイので「まだ、生きてます!」とやったら大ウケだった。やったねっ!
 今日の二次会は、真知子の誕生日パーティとなった。親しい友人たちと狂牛病なんかぶっとばせってことでわざわざしゃぶしゃぶ屋に押し掛けて(ガラスキでした!)牛をやっつけてきた。
 …と、コレで真知子の誕生日も忘年パーティも無事終わり、今年もあと数日となりました。残すところは大そうじぐらい?(オレには関係ないのだ)
今年の日記はこれにて打ち止め。来年もオレの真実の姿をここで告白するので、ちょくちょく見に来てくれ!それではみなさん、楽しい正月を!!

張り切って会場入りするボクちゃん。ランドセル(コルセット)はちょっとカバンにしまっておきました。

パーティ会場で藤子不二雄Aことアビちゃんに会いました。さんざん話をした後で「ところで赤塚氏、そのファションはなに?」だって。後ろにいるはアビちゃんとずーっと一緒に仕事をしている松野さん。実はアビちゃんのお姉さんです。

「クラブ数寄屋橋」で小学館の社長とバッタリ。「おい!元気だったか」といったのはオレの方。オレはひさしぶりに銀座のウイスキーを飲んで御機嫌になったのだ。まん中にいるのがクミちゃん。

小学館のパーティ会場でかつての仲間とかつての担当者が顔を揃えた。右から元アシ高井の研ちゃん、オレ、小学館の武居記者、元アシ安達勉、上は小学館の赤岡さんと三宅さん。みんな年とったな~。

ホロヨイ加減のオレが壇上で挨拶するのを心配そうに見守るのは武居記者。「大丈夫だってば!」

日記 2001年 12月 20日(木)を開く