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2001年 12月 4日(火)
師走にいい話

 「あ~どうしよう!」珍しく真知子があわてている。「お財布落っことしたみたい…」「え?なんだ…」と思ったけれど、思いのほか真面目な顔の真知子さんにそんなこと言ったら、ブッとばされる。
 「いくら入っていたの?」と聞くと、ちいさな声で「30…35万円…以上…」。土日で熱海の家に行こうと思っていたのと、会社に立て替えていたお金を精算したところだったので、いつもよりたくさんお金が入っていたという。オレは「もう出てこないな」と思ったけれど、それを言っちゃあお終いなので「みんなに聞いてみな」と言っておいた。
 それでも現金はともかく絶対に返してほしいものがあると頑張るので、よく聞くとなんとオレの運転免許証が入っているっていうじゃないか!あんなに苦労して取った免許だもの、そりゃあ返してもらわなきゃ!!それと今は亡き愛猫菊千代の爪も入っていたという。そりゃ返してやってくれよ。と、だんだん真知子がかわいそうになってきた。
 それに、真知子の免許証も銀行のキャッシュカード、クレジットカードもオレのも真知子のも全部一切合切がなくなってしまったので、ひとつひとつに連絡をとらなくちゃいけないんだって。それと警察に遺失物届け。あーこの忙しい時に大変と、さらに真知子はしょんぼり。タクシー会社や病院、事務所、車の中…もう一度ていねいに探したり、電話で聞いたりしても見つからなかった。
 それでも事務所の進藤さんに「真知子さんはいっつも人のために一生懸命やっているのに、かわいそう。きっと出てきますよ。でも、もし出でこなくてもあたしが財布につける鈴を買ってあげます。」と言われてずいぶんラクになったみたい。
 そして、免許証がないと運転できなくて不便だから、もう諦めて自動車試験場へ行ってくると言っていたのは財布を落としてから11日目の午後。
 …12日目の今日、事務所にふたりの高校生カップルが訪ねてきた。おずおずと差し出したその手には…「ああ、あたしのお財布!!」 なんでも皇居(!)の植え込みに捨てられていたのを5日ほど前に見つけたんだけど、風邪をひいていて、届けられなかったとのこと。お金は一銭も入っていなかったけど、オレの免許も菊千代の爪も無事戻ってきた!!
 この高校生カップルは自転車で近所から返ってきた真知子を見て「あっあの免許証の顔と同じだからココでいいんだ!」って思ったんだって。
 真知子ったら感激しちゃって、もう大変だったよ。ひとつひとつ財布の中身を説明したり、写真を撮ったり…でも、よかった!世の中捨てたもんじゃぁないな。どれ、オレもお祝してあげなくちゃ。お~い、一杯くれよ!

たくさんのカードに泣きながらハサミを入れました。成仏してください。チ~ン。

天使のようにさわやかな高校生カップル。このまま良い大人になってください。