ある日、田舎から親戚のおばちゃんが上京して、ついでにってボクの様子を見に来たんだ、トキワ荘に。その頃ぼくは、まだ連載漫画なんか1本もなくって、ひどいビンボー暮らしだったんだな。毎日コッペパンをひとつ買って、朝、昼、晩、と三つに分けて食べたり、料理といえばキャベツの油いために、キャベツの味噌汁。お雑煮を作っても、おしょうゆにも不自由するような暮らしだったんだ。でもさー、自分では漫画家っていう夢があったし、周りも似たようなモンだったから、そんなに気にしていなかったんだな。
けれどもね、そのおばちゃんが田舎に飛んで帰って「このままじゃフジオは死んじゃうよ」って、かあちゃんに報告したんだな。そしたらな、うちのかあちゃんスグに、とうちゃんや弟なんか置いたまんま、東京に出てきちゃったんだな。「フジオの一大事」ってね。だからボクはトキワ荘を出るまで、かあちゃんとふたり暮らしだったんですねー。この写真を見てもらえれば分かるように、ボクは完全にマザコン。かあちゃんはホントに料理が上手で、石森のごはんも一緒に作っていたんだよ。今考えると、石ノ森のお姉さんがいたり、藤子不二雄(A)のアビちゃんのお母さんやお姉さんがいたり、藤子・F・不二雄のお母さんがいたり、トキワ荘は全体で家族みたいな暮らしだったんだな。 |